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「お前さ、卒業したら仕事に専念すんだろ?」
いつものように放課後スーパーで買い出しして、何気無く足を踏み入れた近所の児童公園のベンチで海斗が問い掛けた。
自販機で買った温かいココアを飲みながら、頷く。
スーパーの袋を横に置いて、ホットの缶コーヒーを開けて海斗が何時になく真剣な顔をした。
「俺さ、大学経済進む事にした。法学部にするか迷ったんだけどさ」
「進学する事に、決めたんだ?」
一年前は、先の事なんてまだ分からないと云っていた。
けど折角良い成績取ってるんだし、就職を考えても進学する方がいいだろう。
胸の奥が、僅かに軋んだ。
それは海斗との時間が終わるのが、近付いてると云う事。
真冬の空は薄暗く、今にも雪を降らせそうに厚い雲が低く立ち込めている。
晴れた日には小さな子供達の声が響く公園には、誰の姿も無い。
ただ家を出たくて一緒に暮らし始めた頃とは違う。
海斗はちゃんと将来を見据えて、前に進もうとしている。
なら僕は寂しいなんて思っちゃいけない。
ちゃんと応援しなきゃ。
「税理士、目指そうと思って。けど税理士になるには大学だけじゃ時間が足りない。それなら経済行って、先に会計士の資格取れば、少しでも早く役に立てるかなってさ」
「………え?役にって……何の?」
「っ、だからっ、…っ」
僅かに朱く染まった顔を誤魔化すように、缶コーヒーをぐっと煽る。
そして真っ直ぐに僕の顔を見てもう一度口を開いた。
「お前これからどんどん忙しくなるだろ。今は未成年だから編集の人が色々やってくれるけど、成人したら税金の事やら全部自分でやんなきゃなんねぇ。出版社の担当税理士に頼むにしても、個人で雇うにしても余計な金が掛かる。お前には余計な事に気ぃ取られずに、存分に漫画や絵だけ描いてて欲しいんだよ」
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