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始まりの朝
早瀬大翔は不幸だった。
まだ十五歳になったばかりの十五歳だったが、これまでに何度も死にかけたことがある。
歩道に突っ込んで来た車にひかれそうになったり、見ず知らずの人間から襲われそうになったり、空から固いものが落ちて来たりと、危険な経験を数えきれないほどしてきた。
それでもここまで大怪我もせずにこれたのは、幸運と言えなくもなかったが、これからの長い人生を考えると、どうしても憂鬱になってしまう。というよりも本当に自分には長い人生を全うできるのか、そんな不安が頭をよぎることもある。
大翔が不幸な人間だという噂は街中に広まっていた。なので彼には誰も近づきたがらず、ほとんど友達と呼べる人間がいなかった。元々聖霊を宿さずに生まれたので、孤立しがちではあったのだが。
「大翔くーん、待ってよー」
そんな大翔にも一人だけ友達と呼べるような人間が一人だけいた。
朝の通学路、大翔が一人で学校に向かっているところに駆け寄ってきた男子がそうだった。名前は佐伯圭太。眼鏡をかけた小柄な男子。
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