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「どうして先に行くの?せっかく同じ高校になったんだから、一緒に登校しようって約束したじゃない」
息を切らせて圭太は大翔の背中に言う。大翔は振り向こうともしない。
「おれに構うなって言ってるだろ」
大翔は素っ気なく言って歩き続ける。
圭太はその横に移動し、
「だからさ、ぼくは別に気にしないんだよ。大翔くんが不幸かどうかなんて」
「親は気にするだろ」
「確かにそんなことを言われたりもするけど、結局はぼく個人の問題だから」
「おれの不幸に巻き込まれてお前に何かがあれば、責められるのはおれなんだぞ」
「それはそうだけど」
「それに、おれとお前では根本的に立場が違うんだよ」
「魔法が使えるかどうかなんて、そんなに重要かな」
大翔には魔法が使えない。この世に誕生した時、聖霊をその身に宿していなかったからだ。
太古の昔から、この世界は聖霊によって支配されてきた。それはあくまでも自然の摂理を監視する程度で、生物への直接的な干渉は長らく避けてきていた。
しかし人類の進歩により、その立場は変わらずを得なかった。戦争を始めとする争いは、聖霊の作り出す調和の流れを容易く乱し、この世界を崩壊させかねなかったからだ。
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