始まりの朝

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地球の崩壊に危機感を抱いた聖霊は、ある時から人の体に取り付くようになった。人間を内部から支配することで、世界の運命の方向性を変えようとしたのだ。その結果、人間は魔法という力を手にすることになったが、それも聖霊にとっては好都合だった。魔法を使うには、外部の聖霊と内部のそれをリンクさせる必要がある。人が魔法を欲すれば欲するほど、人類は聖霊によってコントロールしやすい存在になっていくというわけだった。 しかし、中には聖霊とは無関係に生まれてくる子供もいる。聖霊の力に限界があるのか、世界のバランスを保つためにあえてなのか、とにかく聖霊を宿さず、魔法が使えない人間が少なからずいる。 大翔もその一人だった。 「この世界のほとんどの人間は聖霊使いだ。この世界に必要とされ、その行く末に大きな影響力を持つ。そこから落ちたおれは生まれつき、落第者ってことだ」 生まれてくる子供の九割方が聖霊使いだ。そのため、大翔のように何も持たない人間は必然的にひどい差別を受けることになる。聖霊使いは聖霊に選ばれた人間だが、かといって清廉潔白とは限らない。個々の感情も存在する。 「そういう言い方は良くないよ。きっと聖霊を宿さなかったことにも、何か意味があるんだよ」 圭太が大翔を慕うのには訳がある。以前、同級生にいじめられていたところを、大翔に助けられたことがあるからだ。それは中学生の時で、圭太が通学路で不良に金を要求されていたところに大翔が通りかかった。大翔は生まれつきの劣等感をものともせずに、不良に勇敢に立ち向かった。軽く返り討ちにあってしまったが、その行為は圭太の心を強く打った。     
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