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「お前みたいに考えるやつは少数なんだよ」
「そうかもしれない。でも、ぼくがそう感じるってことは、他の人も何かのきっかけがあれば変わるかもしれないってことだよね」
「そうだといいけどな」
そう言いながら、大翔は立ち止まった。
「それにしても今日はやけに大人が多くないか」
通学路には至るところに大人が立っていた。腕章を巻き、通学する生徒に目を向けている。普段の様子とは明らかに違っていて、物々しい雰囲気があった。
「あれはきっと、事件の影響だよ」
「事件?」
「うん。大翔くんはニュースとか見ないの?」
「あまり関心はないからな」
興味を持っても仕方がなかった。この国にとって必要なのは聖霊使いであり、報道もそれを原則に構成されている。
「そっか。実は最近、この街で殺人事件が相次いでいるんだよ」
「そうなのか」
「だから警戒してるんだと思う。事件現場も妙だって言われてるから」
「妙って、どういうことなんだ」
「被害者は三人いて、みんな聖霊使いだったんだけど、なぜかまともに抵抗した様子がなかったんだ」
聖霊使いが命の危機を感じれば、魔法で抗うのが普通。その様子がなかったというのは確かに妙ではあったのだが。
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