12月 10日

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12月 10日

「大和、そこ間違えてる。」 そう言って、電子鍵盤を弾く手を止められる。 電子鍵盤は旧型の中古で、三千円で買ったものだ。 ベッドにつけてある簡易テーブルに載せて使っている。 こう、と言って二つ下の音階で弾いてみせる。 相変わらず軽々と弾いて見せるけれど、中々そう速く手が動かない。 「あんたがやってんの見てると、簡単そうなのに。」 頬杖をついてそれを見つめる。 楽譜すら見ずに易々と弾くその姿が、窓から入った夕暮れに照らされて、オレンジに染まって見えた。 「大和もすぐ出来るようになるさ。」 「一ヶ月前からずっと同じこと言われてるんだけど。」
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