12月 10日

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「結岡さん、薬の時間ですよ。」 何回弾き直しても突っかかってうんざりしていた時、ガラガラと扉の音を立てて病室に看護師が入ってきた。 一つに束ねた髪が歩く度揺れている。 「いつものこれと、追加でこの赤いのです。」 そう言って新しい薬の説明を始める。 合計五個になった色とりどりの薬は、発色が良すぎて不自然、毒にすら見える。 それらを奏が水で飲み干すと、看護師はこちらを向いた。 「ああそう、大和くん、今日はもう帰った方がいいわよ。今夜は土砂降りになるらしいから電車が止まっちゃうかもしれないわ。明日も学校でしょう。」 言われて、窓の外に映る橙の空を見ると、確かに遠くの方に黒い雨雲が見えた。 「じゃあ、もうそろそろ帰ります。」 気をつけてね。と残して看護師はせわしなく出ていった。
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