ある日の403号室

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 ガニガニ・9・ボーテは消しゴムと格闘していた。地球では豊臣秀吉という偽名で、地球人調査の任務を帯びている、どこから来たのかよくわからない宇宙人である。賃貸マンション・レジデンス茜台の403号室に、後輩とともに住んでいた。 「くそぉ、どうなってるんだ?」  リビングルームの小さなダイニングテーブルに消しゴムとそのケースを放り投げた。 「だめだ、できない」  ガニガニ・9・ボーテは天井を仰ぐ。 「どうしたんですか、先輩?」  リビングの隅っこのパソコンラックで、型遅れのノートパソコンのキーボードを叩いていたルケルケ・7・トーは振り返る。地球では伊藤博文という偽名で、地球人の調査任務を帯びている、どこから来たのかよくわからない宇宙人である。
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