ある日の403号室

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 ガニガニ・9・ボーテは、怒りと情けなさの混じった表情で訴えた。 「消しゴムのケースには、使い終わったらケースに入れよと書いてあるのだが、引っかかって、うまく入らんぞ」 「……………」  ルケルケ・7・トーはなにか言おうとしたが、なにを言っていいかわからなかった。 「このことは本星に報告せねばならんな」  ガニガニ・9・ボーテは立ち上がり、隅っこのパソコンラックに向かう。パソコンで地球人と地球文化に対する報告書を書き、本星に送るのが日課なのだ。 「ええー、今ですかぁ?」  自宅のリビングであるのにかかわらず、上下のスーツを着込んでいるガニガニ・9・ボーテは、難色を示すルケルケ・7・トーに、 「まだ報告書が書き上がらないのか?」  と、画面をのぞき込む。 「おや、なんだ、これ? 『絶えまなく聞こえるセミの声、諸行無常の響きアリ、アリは働く今日もあしたも、線路は続くよある程度──』意味がわからん」
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