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うちの会社はそれほど人数がいないので、送別会と言っても結局最後はいつもの飲み会のようになってしまう。
午後10時になる頃、送別会はお開きとなった。
佐藤さんや他の何人かは二次会へ行くと言っていた。私は主役の竹内さんが明日朝早くから用事があるから帰ると言っていたので、帰宅することにした。
最寄りの駅を出てマンションへの道を歩く。
オムレツを少し丸くしたような形の月が雲の隙間から見える。そういえば数日前は満月だった。
"あとは心の中とは正反対の行動に出てみる、とかね"
月を眺めながら歩いていると、先程の竹内さんとの会話を思い出した。
同時にチョコを渡せなかったことが頭をよぎる。
あの時ぐちゃぐちゃ考えないでさっさと渡せばよかったのだ。
告白するわけではないのだし。
「そうそう、そんなに考えすぎると体に悪いよ」
「そうですよね......って?わっ!」
「『わっ!』って驚いた人久しぶりに見たかも。何回か呼んだんだけど」
聞き覚えのある声だと思って振り向くと仲村さんだった。彼は神出鬼没ではないかと思う。
なんとなく、というかだいぶ気まずいし、あのバレンタインの時と状況が重なる。
あの時の二の舞いにはなりたくない。
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