月と満ちて

先輩からのヒント

「佐藤さん達と二次会に行ったんだと思ってました」

「ああ、だいぶ佐藤さん達に誘われたんだけどね、送別会だったし、竹内さんがいないのに行くのもなって思って。それで帰ってきたら水野さんが歩いてたから。もしかして同じ電車だったのかもね」

「そうだったんですね。私も竹内さん帰るって言ってたんで帰ってきちゃって」

「それで、水野さんは何悩んでたの？あ、言いたくないならいいんだけど......なんか、水野さんてよく真剣に考え込んでるから」

「え...？」

「こないだ帰りが一緒になった時も、なんだか険しい顔してたし」

「......そんなひどい顔してましたか？」

「うん。しかもほとんど上の空だった」

「いえ...あれは...話を聞いていなかったわけではなくて...」

自分のことに必死で仲村の話をほとんど聞いてなかったことに今さら後悔する。
確かにあの時の私の態度はいくらなんでも失礼だ。

「あと、あの日......泣いてたよね？ あの日別れたあと少し様子が変だったから気になって戻ろうとしたんだけど、もしかして俺が何かしたかもと思って」

「ち、違います！ 仲村さんが何かしたとかじゃなくて......あれはーー」

いつまでも逃げてないでちゃんと言わなくては。