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電車の中は混んでいるほどではないが、空いている席はない。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
何か喋らなくてはと思うが、変な緊張感と焦りからか、なかなか会話が見つからない。
休憩時間や飲み会などで少し話すことはあっても2人きりというのは初めての気がする。
2年ほど前に今のマンションに引っ越して来て判明したのだが、実は同じマンションに住んでいるのだった。ある日ゴミ出しをしている時にばったり出くわして心底驚いた。
だから家に着くまでこのままである。
「そこ、空いたよ。水野さん」
いつの間にか仲村さんの斜め前の席が空いていた。
「え...? あ、いえ。仲村さんが座ってください」
「いや、俺はいいよ。それに水野さん今まで仕事してたんでしょ? すごく疲れた顔してるし。ほら、はやく座らないと取られちゃうよ」
「じゃあ、すみません。ありがとうございます......」
確かに疲れてるけどそんなにひどい顔をしていただろうか。
大体誰のせいで疲れていると思っているのか。いや、これはただの八つ当たりだが。
「なんだか今日荷物多いね」
仲村さんがチョコレートの入った紙袋を指して言う。
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