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「......あぁ、これは、たまたま駅で買物しちゃって」
「もしかしてチョコレート? 今日やたら持ってる人いるし」
「あ、あぁ。そうなんです。実は駅で売っててすごく美味しそうで、自分用に思わず買っちゃって。今日バレンタインデーだからかいろんな店が出てて」
「自分用に買うって人もいるんだね」
仲村が笑いながら言う。中身がチョコレートだと当てられて一瞬うろたえてしまった。
そもそもなぜこの人にチョコレートを渡そうとしているのか。
単純にこの人が好きだからだと思うが、なぜ好きになったのかと言われると、決定的な何かがあったわけでもない。
特別優しいとか、すごくタイプの顔というわけでもない。
けれど彼の所作というか、雰囲気がなんとなく気になってしまうのだ。
もう5年ほど一緒に働いているが、いつからか、彼を気にしている自分がいる。
もしかしたら、恋だとかそんなものではないのかもしれない。
それに、もしこの気持ちを伝えることができたとしても、付き合うとか先に進みたいと思うのかと言われると違う気がする。
でも他の人のものになってしまったら、それはそれで少し落ち込むかもしれない。
過去を振り返っても、私は恋愛にそれほど執着するタイプではなかった。
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