2月14日

4/8
前へ
/23ページ
次へ
「......あぁ、これは、たまたま駅で買物しちゃって」 「もしかしてチョコレート? 今日やたら持ってる人いるし」 「あ、あぁ。そうなんです。実は駅で売っててすごく美味しそうで、自分用に思わず買っちゃって。今日バレンタインデーだからかいろんな店が出てて」 「自分用に買うって人もいるんだね」 仲村が笑いながら言う。中身がチョコレートだと当てられて一瞬うろたえてしまった。 そもそもなぜこの人にチョコレートを渡そうとしているのか。 単純にこの人が好きだからだと思うが、なぜ好きになったのかと言われると、決定的な何かがあったわけでもない。 特別優しいとか、すごくタイプの顔というわけでもない。 けれど彼の所作というか、雰囲気がなんとなく気になってしまうのだ。 もう5年ほど一緒に働いているが、いつからか、彼を気にしている自分がいる。 もしかしたら、恋だとかそんなものではないのかもしれない。 それに、もしこの気持ちを伝えることができたとしても、付き合うとか先に進みたいと思うのかと言われると違う気がする。 でも他の人のものになってしまったら、それはそれで少し落ち込むかもしれない。 過去を振り返っても、私は恋愛にそれほど執着するタイプではなかった。     
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加