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好きな人ができても、他に趣味ができたり、仕事が忙しくなってくると、無頓着になってしまうことが多かったのだ。
そんな自分が数年間も気になっているということは、やはり恋に近い感情ではないかと思い、今年のバレンタインにチョコを渡そうと思い立ったのだった。
だが、イベントに踊らされているようで馬鹿らしいと感じている自分と、気持ちを伝える手段にバレンタインデーを選んだ自分との葛藤がずっと続いている。
『なにやってんだか......』と、もはや自分のあまりの情けなさに笑えてくる。
それに、こんな風に会社以外の場所で2人になったとしても会話すらままならないなんて、チョコ云々以前の問題ではないか。
「ーーのさん、水野さん?」
「は、はい?!」
「なんか大丈夫? 具合悪い?」
「あ、いえ......すいません。大丈夫です」
「ならよかった。すごい険しい顔してたから」
「あはは......ちょっと疲れてるのかもしれないですね」
力なく笑いながら答えると、最寄駅を告げる電車のアナウンスが聞こえてきた。
結局一人で悶々としているうちに駅に着いてしまった。
家に着くまでこの状況だと思うと嬉しさよりも気まずさが勝っている。
「あ、あの!」
「え?」
少し前を歩いていた仲村が振り返る。
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