月と満ちて

2月14日

ーーどうしたものか。

もうかれこれ10分程女子トイレにこもっているわけだが、どうにも解決する術が見つからない。

"はい"と言って渡せばいいだけではないか。
だがそんなことわかっている。
そもそも、簡単にできたらこんなに苦労などしていない。

これが小学生や中学生だったらかわいい悩みだと思うのだが。
27歳にもなって、バレンタインデーにチョコを渡せなくて悶々としているなんて。

チョコレートの存在意義にまで思考が脱線したところで現実に戻る。
もうそろそろ戻らなければ昼休みが終わってしまう。

気持ちを切り替えようと、小さく深呼吸してから私は女子トイレを後にした。