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白銀の人形
身体中の筋肉が悲鳴を上げている。
息が切れて、今にも肺が爆発しそうだ。
趣味でランニングをするならともかく、
こんな深夜に、それも30分以上も、
狭い路地を駆けずりまわっている人間など、
世界中を探してもそう居ないだろう。
いや、30分ではなく、
実際にはもっと短い時間なのかもしれないが、
とにかく体感だとそれくらいに感じられる。
正しい時間は、それこそ時計を確認すれば分る事ではあるが、
最早時計を確認する体力すら惜しい。
まぁ時計なんて持ってないけどね!
おまけに月明りだけがぼんやりと照らし出す裏路地は、
ゴミ、ゴミを漁るネズミ、ゴミ、ゴミ、ネズミ――
どこも同じ道に見えて、
一か所をグルグル回っているのではないか、
という錯覚に陥るほど、精神的な疲労もピークに達している。
「あぁ、もう、そろそろ、あきらめろって!」
息も絶え絶えに、悲鳴を上げ、
「そういえば今の台詞、この一週間で何回叫んだっけな?」
等と必要のない事を考えてしまった。
無駄な思考で無駄な酸素を脳が消費し始め、
無意識に走るスピードが落ちようとしていたその時、
狙いすましたかのように無線機から反応があった。
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