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相棒のナビゲーションに従い、全速力をキープしたまま角を曲がる。
人間とは現金なもので、
もうすぐこの苦行が終わる、という事が分かっているからか、
足の動きも幾分かスムーズだった。
「見えたっ!」
角を曲がったその時、
白い服を着た小さな影がチラリと見える。
こうして姿が目視できたのは、何分ぶりだろうか。
ほんの数時間前、
その姿を見失った時の相棒の罵倒ときたら、
背筋がゾクゾクとしたものだ。
断じてそんな趣味はないと思うのだが、
耳元で静かに罵倒されると、ね?
ともあれ、この先は相棒お墨付きの袋小路。
ここまでお膳立てされて取り逃した日には、
罵倒だけでは済まないかもしれない。
ありえない事ではあるが、
相棒がもし俺に愛想を尽かしたなら――
ぞくり、と嫌な悪寒が背を撫でる。
いや、そんな事を考える前に目の前の対象だ。
かぶりをふり、最悪な妄想を振り払うように、
ただひたすらに路地を駆ける。
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