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「あのっ、光成様? それでですね! 俺、光成様にお願いがあるんですが。よ、よろしいでしょうかっ」
「あ、はい。何でしょうか」
何だろう? すごく気合いが入っている。というか、思いつめたような真剣な面もちだ
「えーと、俺たち、またふたりで組んで仕事するんですよね? それなら、俺のことは家名の『賀茂』ではなく、名で呼んでいただきたいんです」
ん? 名で、とは?
「俺、もっと光成様と距離を縮めたくてですねっ。はっきり言えば、もっと親密になりたいんです! だからですね、是非とも名前で呼び合いたくっ!」
あぁ、わかった。そういうことか。
「わかりました――――真守殿。これで良いですか?」
「……っ。は、はい! 嬉しいです。ありがとうございます! 俺、また頑張ります。光成様のために頑張りますからっ!」
ふふっ。名で呼んだだけなのに、こんなに満面の笑みを見せて……本当に可愛らしいことだ。
賀茂真守殿。
陰陽博士を務めておられる賀茂護生様のご子息で、以前、頭中将様から拝命した妖絡みの事件をともに解決した相手。
そして、今回も同じ命が中将様より下されている。ともに事に当たる仲間であるのに、他人行儀ではいけない。
『私のために』という言い間違いは、『主上のため』と後で訂正を促すことにして、まずは親睦を深め合うこととしよう。
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