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「――――という話なのです。光成様、いかが思われますか?」
この時間はあまり人が通らない弓場寄りの東庇に移動し、真守殿からの報告を受けることにした。
「そうですねぇ。今のお話によれば、妖騒ぎが集中しているのは、先日私たちが待ち合わせをした仁寿殿ということになりますね。けれど、私は清涼殿でも一度目撃されているという点が、気になります」
「さすが、光成様です。私の父も同じことを申しておりました」
「いえ、私などは……けれど、陰陽博士である賀茂護生様と同じ見解ということは、この推察は間違ってはいないということですか。口にしたものの、当たっていてほしくない憶測であったのですが……」
例え一度きりであったとしても、主上の寝所でもある清涼殿に妖が現れたというのは、由々しきことだ。これは、頭中将様にもご報告にあがらねば……。
「光成様のおっしゃる通りです。それでですね、その件について父から光成様へのご伝言がありまして……あ、あの、もう少し近くに寄ってもよろしいですか? これは内密の話でして、そ、その、疚しい気持ちでは決してなくっ!」
ん? 真守殿は何を焦っているのだろう? 内密の話なら、顔を近づけるのは当然なのに。
「はい、構いませんよ。これくらいの距離でよろしいですか?」
「はっ、はいぃ! じ、じっ、充分ですっ。でで、では、お耳元に失礼いたしますっ」
内密の話なのに結構な声の張り上げぶりが気になったけれど、その後に声をひそめて告げられた話の内容に集中することにした。
「――わかりました。では今宵、先日と同じあの百日紅の前で落ち合いましょう」
主上のおわす内裏に出没しているという妖。大事になる前に、何としても秘密裏に解決しなければ……!
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