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しかし、私に文など、いったい誰からだろう?
疑問でいっぱいだが、まずは読んでみなくては。
白と紅。二枚重ねの薄様の紙を、結びつけられた紫苑の造り枝から丁寧にほどいていく。
「……ん?」
女童に怖がられていないとわかったことで浮き立った気分のまま、さっと開いた、その文には――。
『梅が香を 人にたづるる』
ただ、これだけが、薄墨の細い文字でしたためられていた。
「これは……」
何だろうか。
いや、何と問うまでもない。
文付枝に紅白の薄様で届けられたのだから、一応は……。
「おい、光成! そそっ、それは、懸想文ではないのかっ? 誰からだ? どこの誰からの文なんだぁっ?」
「え? あっ! 何をなさいます!」
「だだっ、誰がお前にっ…………へ? 何これ……」
「『何これ』じゃありません!
人への文をいきなり奪って勝手に読むなど、何をなさるんです! 早く、それをお返しくださいっ」
突然手元から奪われた文を、今度は逆に建殿から奪い返した。
全く、もう! 私への文だというのに無理やりに奪って読むとは、いったいどういうつもりだ?
それに、先ほどから「誰からの文だ」と、しきりに問うておられるが、それもどういうことだろう。
「すす、すまん。しかしお前、それは……けけ、懸想文! 懸想文ではないのかっ?」
建殿は、何をこのように必死になっておられるのだろう。
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