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――かさっ
ふたりの袍が、擦れ合う。
建殿と私。六位の官位を指し示す、深縹色の衣冠の袍。
その絹の綾が、互いにぴたりと密着している。
これは、どうしたことだろう。建殿と私に、いったい何が起こっているのだろう。
私には、理解できない。
「光成」
「はっ、はいっ!」
びくんっと、背すじが伸びた。
建殿の声が、ごくごく間近から聞こえてきたから。
耳元だ。私の耳に、とっ、吐息が!
私よりも一寸ほど背丈が高い建殿の吐息が、私の耳にかかっている。
つまり、それほどの至近距離で私たちの顔が近づいているということ。
それはわかった。しかし、なぜっ?
「私は、お前も知っての通り、かなりの迂闊者だ。だから、どうか……私にわかるように、筋道立てて教えてくれ」
無理です。
鼓動が恐ろしいほどの速さで打ち鳴らされ、このままでは息もできない。
こんな状態で、わかりやすく筋道立てて話せ? できません。無理です。取りあえず離れたいのです。
つい先程までの私は、あなたに触れていてほしいと願っていましたが、それはなかったことにします。
「た、建殿? あの、まず離れてくださいませんか?」
「駄目だ」
「え? あの……ですが、この体勢でお話するのは、無理があります。ですので、まずはお手を離してくださ……あっ」
「駄目だ、と言ったろう? 逃がさない。私の腕の中で、話して聞かせてくれ」
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