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……おかしい。
建殿が、おかしい。この状況も、色々おかしい。
唐突に包み込まれてしまった建殿の腕から逃れたいのに、それまで以上に強い力で、さらに抱き込まれてしまった。
どういうことだろう。
耳元に吐息がかかるほどに顔も身体も密着した体勢が苦しすぎて、離れたかったのに。
離れるどころか、先程よりもきつく、互いの袍も胸元も重なり合っている。
これは、いけない。これでは、痛いほどにどくどくと跳ねている胸の鼓動が、建殿に伝わってしまうではないか。
いけない。やはり早く離れなければ。この人に、変に思われてしまう前にっ。
「あの、たけ……」
「逃がさないと言ったろう!」
――びくんっ
「……え?」
建殿? どうして、そのように怖いお顔を……?
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