弐 濡れる朝顔の、儚さと… 【二】

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……おかしい。 建殿が、おかしい。この状況も、色々おかしい。 唐突に包み込まれてしまった建殿の腕から逃れたいのに、それまで以上に強い力で、さらに抱き込まれてしまった。 どういうことだろう。 耳元に吐息がかかるほどに顔も身体も密着した体勢が苦しすぎて、離れたかったのに。 離れるどころか、先程よりもきつく、互いの(ほう)も胸元も重なり合っている。 これは、いけない。これでは、痛いほどにどくどくと跳ねている胸の鼓動が、建殿に伝わってしまうではないか。 いけない。やはり早く離れなければ。この人に、変に思われてしまう前にっ。 「あの、たけ……」 「逃がさないと言ったろう!」 ――びくんっ 「……え?」 建殿? どうして、そのように怖いお顔を……?
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