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濃紺と朱鷺色が密に絡み合う、まだ明けきらない空のもと。
ほんのりと残る朝靄に身をさらし、まだ暗き道をよどみなく歩を進めていく。
見上げる空には、有明の月は見えない。
昨夜は、新月――――朔の夜。
朝の陽光が内裏を照らし出す頃には、糸のように細い三日月が、薄藍色の空にその白き姿を見せることだろう。
陽の光に薄れ、消えゆく儚い美は、情緒に欠けているとよく言われる自分でさえ、惜しむ気持ちが湧いてくるようだ。
だが、ひとりで眺めていても何の意味もないから、やはり歩く足は止めない。
真っ直ぐに向かうのは、内裏の中ほどに位置する仁寿殿。
まだ暗き道のりだが、もうそこに近づいていることには気づいていた。
清かに吹き抜ける朝の風が、甘やかな花の薫りを運んできているからだ。
仁寿殿の脇で、つるりとした枝を存分に伸ばしている百日紅の木。鼻腔をくすぐる甘い薫りが、その見事な存在をはっきりと知らせてきていたから――。
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