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川端真由(かわばたまゆ)ちゃんはオレの後輩で、入行年度は田中の一つ上。支店で預金係をしている。
二十六歳でminaと同じ年だし、真由ちゃんは性格もおっとりしているので引き合わせて悪いことはないだろう。
真由ちゃんの仕事が終わって、更衣室に戻ろうとする所をさっそくつかまえた。
「佐伯さん、またわたしのミスをお客さんとのネタにしたでしょーー今日、朝霧建設さんの専務が来店されて、すごい笑われたんですからね」
真由ちゃんは可愛らしい頬を膨らませてむくれていた。
「ごめん、ごめん、オレのお客さんにも真由ちゃんのファンが多いんだよ。それだけ愛されてるってことで……」
「もう、またそんなこと言ってーー」
「そんなことよりさあ、真由ちゃん。歌手のminaって知ってる?」
「もちろん、知ってますよ。わたしファンなんです」
ファンなのか。それなら話が早いな。
「そのminaと食事に行けるとしたら、どう?」
「本当ですかぁ? とか言って、佐伯さんまたわたしの事からかってるでしょ。もう、だまされませんよ」
そう言って、真由ちゃんはふざけながらおれの肘のあたりをつついてきた。
真由ちゃんが動くとポニーテールに結んだ髪と、彼女の銀行の制服の胸元が大きく揺れる。この子、かなり大きいのだ。制服のベストなんてぱっつんぱっつんだしな。
「それが、本当なんだよ」
オレは今日の日中の出来事をかいつまんで話した。
「じゃぁ、佐伯さんはminaちゃんの恩人ってことですね。すごいーー」
「って、言ってもたいしたことないけどな」
「本当にわたしも行っていいんですか? わぁ、楽しみーーじゃあ、また空いている日メールしますね」
真由ちゃんの当初の機嫌はばっちり直っていて、まさにルンルンといった足取りで帰っていった。
minaってやっぱすごいんだな。オレも今度会う前にアルバムくらい聴いておくか。
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