66人が本棚に入れています
本棚に追加
オレたちが呆気に取られていると、minaはこちらに近づいてきた。
てっきりお義理で挨拶でもしてくれるのかと思ったが、彼女が口にしたのは驚くべきことだった。
「あの……ずっとお会いしたかったです……」
えっ? オレや田中が言うのならわかるけど、なんであなたが?
なんかすごいキラキラした瞳で見つめてくるし。距離近いよ。今にも手を握られそうな勢いだ。
わかった。これは支店長の差し金だな。
こんな可愛い親戚&芸能人を使ってオレをドキドキさせようとそういう魂胆に違いない。
「あの時は、ありがとうございました。私、ずっとお会いしてお礼が言いたくて……。助けてもらったのに何も言ってなくて」
?? 助けた? オレが? 今売り出し中の歌姫を?
さすがにこんなに可愛い子なら覚えてると思うんだけどな。
オレがドギマギしていると、minaは少し困ったような表情に変わり、
「あの……、もしかして……、覚えてません?」
「あっ!! 佐伯さん! あの時の」
田中が素っ頓狂な声をあげた。
「二年くらい前に、飲んで帰ったとき、路上でギターやってた子!」
ん? なんだそれ?
「絡まれてて、佐伯さんとオレで助けて。でもその後すぐ佐伯さんゲロ吐いてて……」
おおっ。そんなことあったっけか。
あの時の女の子がminaだったというのか。
あれっ!なんか雰囲気ちがくないか?
まさか芸能界で売れるためにイジったとか。
んなわけないか。
最初のコメントを投稿しよう!