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オレがminaを見つめると、彼女は
「あのときは、たぶん、ショートカットだったと思うので。伸ばしたんです……髪」
「そうか、そうか、あの時の女の子がminaさんだったんだ! 偶然ってすごいですね、ねえ、佐伯さん」
田中がしきりにこちらに絡んでくる。ていうかお前役立たずだったじゃん。
オレはというと、余りに色んなことが起きすぎて、思考を整理しきれずにいた。
「久々に、叔父さんに会って名刺をもらったら、名刺のロゴがあの時助けてくれた人が胸元につけていたバッチと似ていたんで、もしかしたらと思ったんです。ほんと偶然なんですけど」
そう言って目の前のminaは微笑んだ。
「あの…… もしよかったらお礼に今度食事でも、ごちそうさせてください。二年越しのお礼なんてイヤかもしれないですけど」
「ぜひ、ぜひ、行きましょう!!」
田中はうれしそうな表情だ。こういう時に、単純なヤツはうらやましい。
オレはフリーズしっぱなしだ。こんなに性能悪かったか? おれのCPU。
「ダメ……ですか?」
minaは不安そうな表情でこちらを覗きこんできた。相変わらず手を伸ばしたら触れそうなくらいオレとの距離が近い。頼むからそんな切なそうな表情で見つめないでくれ……なんか頭がクラクラしてきた。
「じゃぁ、オレと田中と……」
支店長の方を見ると、「おまえらだけで行って来い」という感じで首を振っていた。
オレにまかせるということか、じゃあ。
「あと、女の子の後輩も連れてきてもいいかな? それでどう?」
minaは一瞬考え込んだ様子だったが、すぐに飛び切りの笑顔になって
「ありがとうございます! お願いしますね!」
まるで飛び跳ねるように喜んでいた。
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