第1章

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5枚目、「杏」が産まれた村の跡と思われる場所で撮った写真。 「杏」は義父の実子では無い。 「万」が生まれる40年程前義父が狩りの途中立ち寄った無人の村で、出産後力尽きた母親の傍で死にかけていた赤ん坊が「杏」だった。 「杏」を育てた経験者としての腕を見込み、「万」の両親が相次いで亡くなったあと村中の人達の総意で、「万」は義父に預けられ育てられる。 とは言っても実際に育ててくれたのは義理姉の「杏」だったが。 写真を撮ったあと夕食を作り食べ、焚き火の傍で「杏」に抱かれて満天の夜空を眺めながら眠りに就く。 6枚目、夕日に彩られた山をバックに撮った写真。 7枚目、何処までも広がる海と白い砂浜の写真。 8枚目、崩れかけた摩天楼が広がる無人の都市。 9枚目、樹海にのみ込まれつつある都市の写真。 高い山や広々とした海岸で双眼鏡を手に人の営みを探す。 都市や街を見つけると、車の上に括り付けたスピーカーを通して呼びかける。 だが何処まで行っても人の営みは見えず、呼びかけに答えてくれる人はいなかった。 「もう僕達しかいないのかな?」 「諦めちゃ駄目! 生きている人は何処かに絶対いるわ。 だから頑張ろう、ね」 「そうだね、ありがとう姉ちゃん」 「その言い方は駄目。 結婚した時約束したでしょ、此からは「万」「杏」って呼び合うって」 「ごめん、杏」 「そう、それで良し。 万はあたしの大事な旦那様だからね」 「うん!」
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