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「おーい! 瑞希ぃ」
後ろからやたらとボリュームの大きい男子の声が聞こえた。
振り返るまでもなく、誰のものかわかる。
幼なじみの悪友、山藤嘉人。
私は、額に手を当てて、がっかりしたようにうつむいた。
本当は走って逃げて行きたいが、あいつの方が速い。
逃げ切れるものではなく、恥ずかしさが何倍にもなるだけだ。
今ではすっかりと諦めて、彼が追いつくのを待つ。振り返りはしない。歓迎などしていないのだから。
「昨日、一緒に登校するって言ったじゃん」
追いついてきた嘉人は、開口一番、不満そうな顔でそう言ってきた。
私は視線も合わせず、ふんと小さく鼻を鳴らした。
「だって、そうでも言わなきゃ、あんた納得しなかったでしょ? こっちは授業中だったのよ!?」
「約束を破るなんて酷いだろ。俺、ずっと待ってたんだぜ?」
「知らないわよ。バカ!」
「あ、待てよ」
怒った私の背を嘉人が追いかける。
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