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「嘉人……」
私は、あの屈託のない笑顔を思い出して、小さく笑った。
そうだ。そう言えば、あれ……どこに置いたっけな。
私はアルバムを開いたまま床に置いて立ち上がる。
確か、そう……この本棚の奥。
手前に並ぶ本をどかして棚の奥をのぞき込む。
奥に並んだあまり読まないと分類された蔵書の列に並んで、小さな手作りの冊子があった。
ノートを切ってホチキスで留めた手作りの本。
手書きで書かれたタイトルは「オレのひみつ」。
いかにも子供が書いたようなつたない字、定規も使わずにフリーハンドで書いた枠。下手くそな挿絵。すべてが著者「山藤嘉人」の作品だ。
私はクスリと笑い、その手作りの本を開いた。
見開きいっぱいに描かれた少年の絵。嘉人の自画像だ。
吹き出しに「これは、オレとみずきだけのひみつだぞ。ほかのやつにはいうなよ」と書いてある。
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