アルバム

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「ホント、バカね」  私は一人つぶやきながら、ページをめくる。 最初の挿絵に比べたら、明らかに描き込みの情熱がトーンダウンしたおざなりな自画像が続けてセリフを語っていた。 「オレのひみつ1。父ちゃんにもらったたからもの」  その横には、キラキラ光るロケットペンダントが描かれていた。 私は、嘉人がそれをいつも首からぶら下げていたのを思い出した。 誇らしげに輝くロケットペンダント。中に入っている写真も、何回か見せてもらった。 私はページをめくる。 「オレのひみつ2。ひみつきちのちず」  その横には、相変わらず下手くそな地図が。 そうだ。確か、近所の空き地から続く林の奥。 大きな楢の木の陰に嘉人の秘密基地はあった。 大人では少しキツいくらいの狭い空間。木の枝やツタなどで作られた隠れ家。 よく二人であそこにお菓子を持ち込んで食べていたっけ。 私は、その頃のことを思い出してクスクスと笑う。 「オレのひみつ3。オレのすきなひと」  その横には、女の子の絵。長い髪をポニーテールにした女の子。 下手くそな絵だったけど、それは私だ。 「ずっとなかよくしてくれよな!」  さいごに大きな字でそう書いてあった。 小学校二年生の時に、誕生日プレゼントにもらった私の宝物。 私は手作りの本を大切に閉じる。 そして、開きっぱなしのアルバムに手を伸ばした。 高校の卒業アルバム。 先生を中心に並ぶ生徒一同の中に、学生服を着た嘉人の姿はない。 嘉人は中学三年の春、病気でこの世を去った。 同じ高校に通うはずだった。 幼なじみの悪友。
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