アルバム

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「お、卒業アルバムじゃん」  ふいに嘉人が後ろから覗き込んできた。 「わ、いきなり現れないでよ!」  私が振り返ると、それまで誰もいなかった場所に嘉人が立っていた。 嘉人はニカっと笑って言う。 「へへ、オレもよく行ったっけなー。瑞希の側で一緒に授業受けたりさぁ」  私は呆れたようにため息をつく。 「何言ってるの。だいたいまじめになんて聴いてなかったじゃない」 「当たり前だろ、幽霊に勉強なんて要らないよ」 「そんなことないわよ。あなた、幽霊になったのは中学三年生でしょ?何年経っても頭の中が中学生じゃ、どうしようもないもの。今だって一緒にいろいろ勉強したから、それなりの学力があるんじゃない」 「へへ、瑞希さんには感謝してますよ」 「何よ、それー」  いたずらっぽく笑う嘉人の胸の辺りを、私はじゃれるように叩く。 叩いた腕は煙に腕を突っ込んだように、彼の身体には当たらず抵抗なく後ろへと突き抜けた。 「あのさ、こんなもの見つけたんだけど」  私は「オレのひみつ」をひらひらと嘉人に見せつけた。 幽霊の嘉人が恥ずかしそうに顔を紅潮させる。 「うわ、おま、それ……」 「オレのひみつ3。オレのすきなひと」  私は、ニヤリと笑って嘉人の描いた女の子の絵を見せる。 「ちょ、ガキの頃の話だから!」 「あら、今は私のこと好きじゃないの?」 「ん……それは……」 「あはは、やっぱり頭の中は中学生のまんまね。かっわいいー」 「う、うるせー、祟るぞ!」 「え、祟ったりしたらお祓いしちゃうから」 「……っ」  言いくるめられた嘉人はギリギリとしながら、宙をふわふわうろうろと漂っていた。 「嘘よ。幽霊になってでも一緒にいてくれて嬉しいよ、嘉人」 「瑞希……」  私は、にっこりと笑って「オレのひみつ」の最後の一文を指さした。 「ずっとなかよくしてくれよな!」  嘉人も恥ずかしそうに、微笑んだ。
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