0人が本棚に入れています
本棚に追加
「お、卒業アルバムじゃん」
ふいに嘉人が後ろから覗き込んできた。
「わ、いきなり現れないでよ!」
私が振り返ると、それまで誰もいなかった場所に嘉人が立っていた。
嘉人はニカっと笑って言う。
「へへ、オレもよく行ったっけなー。瑞希の側で一緒に授業受けたりさぁ」
私は呆れたようにため息をつく。
「何言ってるの。だいたいまじめになんて聴いてなかったじゃない」
「当たり前だろ、幽霊に勉強なんて要らないよ」
「そんなことないわよ。あなた、幽霊になったのは中学三年生でしょ?何年経っても頭の中が中学生じゃ、どうしようもないもの。今だって一緒にいろいろ勉強したから、それなりの学力があるんじゃない」
「へへ、瑞希さんには感謝してますよ」
「何よ、それー」
いたずらっぽく笑う嘉人の胸の辺りを、私はじゃれるように叩く。
叩いた腕は煙に腕を突っ込んだように、彼の身体には当たらず抵抗なく後ろへと突き抜けた。
「あのさ、こんなもの見つけたんだけど」
私は「オレのひみつ」をひらひらと嘉人に見せつけた。
幽霊の嘉人が恥ずかしそうに顔を紅潮させる。
「うわ、おま、それ……」
「オレのひみつ3。オレのすきなひと」
私は、ニヤリと笑って嘉人の描いた女の子の絵を見せる。
「ちょ、ガキの頃の話だから!」
「あら、今は私のこと好きじゃないの?」
「ん……それは……」
「あはは、やっぱり頭の中は中学生のまんまね。かっわいいー」
「う、うるせー、祟るぞ!」
「え、祟ったりしたらお祓いしちゃうから」
「……っ」
言いくるめられた嘉人はギリギリとしながら、宙をふわふわうろうろと漂っていた。
「嘘よ。幽霊になってでも一緒にいてくれて嬉しいよ、嘉人」
「瑞希……」
私は、にっこりと笑って「オレのひみつ」の最後の一文を指さした。
「ずっとなかよくしてくれよな!」
嘉人も恥ずかしそうに、微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!