女バスの噂

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女バスの噂

ーーハッ、ハッ、ハッ 乱れた息遣いが耳にまとわりつく。 広田奈帆(ひろたなほ)は、目の前で揺れるチームメイトたちの背中をぼんやりと見つめた。 これでも、小学校の頃に比べたら大分速くなった。 奈帆は心の中で自分を励まそうとする。 どの部活もそうだが、バスケ部は特に持久力を必要とされ、練習はいつも走り込みからスタートした。 入部してから半月、こうやって学校の外周を走らされてばかりいる。 奈帆の通う深見高校がある埼玉県北部は、盆地になっていて上昇した気温の逃げ場がない。 まだ5月とはいえ、今日のような日差しが強い晴天の日に走れば、たちまちTシャツは背中にベッチャリと張り付いた。 左側に視線を向けると、エメラルドグリーンのフェンスの奥で日に焼けた生徒たちが走り回り、サッカーボールやラグビーボールが跳ね上がっているのが見えた。 右手には広大な田畑が黄緑色の葉先を揺らしている。 奈帆はなんとか前を走る集団に追いつこうと懸命に走った。 顎のラインで切りそろえられた黒髪が揺れる。 前髪をピンで留め、全開になった形のいい額からは汗が止めどなく吹き出ていた。 後ろから、アスファルトを擦る靴音が近づいてくる。
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