第一章 栄光再び

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殺気立った男が殴りかかってきた。山野辺はそれをひらりとかわすと、がらあきになっているボディに闘牛士が牛に剣を突き刺すように拳を繰り出した。「ドス」という鈍い音と共に、男はその場にうずくまり、苦悶の声をもらしながら胃の中のものをぶちまけた。山野辺、至福の瞬間だった。すると、スーツを着た男20人ほどが現れ、山野辺を囲んだ。 (ヤベェな…) 「なにかご用ですか」 内心焦りながらも、平静を装い、目の前の男に聞いた。 「調子に乗るなよ」 と、男が前蹴りを食らわせてきた。山野辺は、間一髪それをバックステップでかわすと、その男を目にもとまらぬワンツーで殴り倒した。 「かかってこいよ」 ここで山野辺のスイッチも入ってしまった。殴り合いの世界で生きてきた山野辺である、素人相手なら何人集まろうが負ける気はしない。 「ふん」 気合いの掛け声とともに一番体のでかい男が突進してきた。ラグビーかなにかの経験者だろう。山野辺は高速のジャブを放り込んだかと思うと、サイドに動き、男をかわした。男は叫び声をあげてしゃがみこんだ。その男の鼻の骨は粉々に砕け、血が大量に噴き出していた。あっと驚いていた近くの男も難なく殴り倒し、すでに大勢が決したかに思われた。 「お前は殺す…」 一人の男が余裕ありげな顔で前に出ると、サバイバルナイフを取り出した。 「土下座すれば、」 と言った瞬間、目にも映らぬ速さで拳が男の顔面に吸い込まれた。うわぁと顔を抑えた男は、こめかみに大砲の左フック、右ストレートとぶち込まれ吹っ飛んだ。すぐに山野辺はその手を踏みつけ、ナイフを取り上げた。プロのパンチをかわしてきた山野辺に、素人の扱う刃物なんてかするはずもない。 「全員ぶち殺してやるよ」 山野辺がニヤリと笑みをこぼし、トントンとステップを踏んだ。 「おい、そこまでだ」 そう叫ぶ男がさっきの少女の首に手をかけ、 「こいつの首をへし折る」 と笑った。山野辺がやばいと思った刹那、後ろから男に殴られ馬乗りになって上から殴られた。他の男も加わりタコ殴りにされるとさすがの山野辺も手も足も出ず、お手上げ状態に陥った。 (これはさすがにやばい…)
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