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意識が薄れていく。少女のことは心配だな、と思った瞬間、急に上に乗っていた男がいなくなった。正確にいうと、蹴り飛ばされていた。
「あんた、大丈夫か?」
40過ぎの小太りの男が山野辺を起き上らせた。
「戦えるか?助けに入ったはいいが、この人数を僕一人ではどうにもできん。」
山野辺は頭がフラフラしていたが、味方ができたことで気力が回復していた。
「ありがとう。ただ、あそこに子供が…、あっ!」
子供を人質に取っている男が会社員風の男にやられていた。白髪交じりの優しそうな男が傘を構えている。
「この子は大丈夫。私も味方です。参戦しますよ。」
その隙のない構えから、剣道の有段者であることが遠目でもわかった。
「うわっ」
「ぐぎゃ」
山野辺たちを囲う円を破るように男が吹っ飛ばされていく。
「偶然ですね、先輩」
「タノシイネー、山野辺ツヨイヨー」
(あっ…)
二人の男が現れた。その二人はボクシング現役時代の後輩と、拳を合わせた戦友ともいうべき男だった。後輩は自分より二つ下、戦友のゴメスは50に近いのではないか。みんなおっさんである。後輩の下村は現役時代、不運なマッチメイクばかりに泣いた無名のボクサーだったが、山野辺のパートナーを務めた続けた実力者である。下村はワンツーフックからのボディで敵を悶絶させたかとおもうと、手当たり次第にコンビネーションを試すようにして繰り出し敵を叩きのめしていく。ゴメスは輸入ボクサーとして、パンチの破壊力を売りに日本でプロデビューした男で、山野辺の栄光を途絶えさせたのもこの男だった。ちなみに、その後の世界戦ではパンチを空転させられ、終盤に倒されて終わっている。ゴメスは、じりじり距離をつめ、身体を沈め、ねじるようにして力をためた後、大きな左フックを繰り出した。敵は鈍い音を響かせ、大きく宙を舞った。
それでも向かってくる敵を、山野辺含む5人は全て叩き潰し、20人いた集団を壊滅させてしまった。
その一件は山野辺にとって、自分自身が役に立ったという自信になり、仲間に入ったおっさんたちのパワーを受けることができた。山野辺はその後、腐ることなく第二の人生を歩み始めた。
余談だが、その傍らには、助けた少女の姿があったが、その関係はわからない。
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