4月21日

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 男女数名。ユニフォームを着ているので、運動部の生徒だとわかる。  真剣な顔をしていた。 「あのっ」  あたしが口を開きかけた途端、   「月野くんっ! 何度も言うよ、君の運動神経があれば、全国大会も夢じゃないっ」  突然、半そで短パン短髪の生徒にさえぎられた。 「それどころじゃないわ! 小鞠くんのジャンプ力は、我がバレー部に必要な人材なのよ」  今度は、バレー部の生徒。 「いや、あの瞬発力こそ、是非うちの陸上部にっ」    陸上部。 「センスがあるっ」  ちなみにテニス。やったことない。 「度胸はっ!」  ない。 「スピリチュアルな世界を一緒に」    お断りします。  エトセトラ、えとせとら。 「月野くんっ!」 「月野小鞠くんっ」  熱心な部活動の勧誘だった。  みな共通してるのは、運動部の人たち。  熱心なのは結構だけど、格好とか目標が、今は西暦何年だっけと考えさせられた。  ああ、入学式早々に決めちゃった『アレ』が原因なんだと思う。隣では、ゆっちがうんうん。と頷いてる。  入学式の日。寝坊したあたしは、近道をしようと、校門沿いに続く壁を、『飛び越え』たのだ。  正確には、壁と電柱を利用した三角飛びなのだが、2メートルはあろうかという壁を飛び越えたように見えたらしい。  入学式で集まっていた全校生徒に目撃され、大注目を浴びてしまい、運動部から勧誘を受ける日々になっていた。  でも、あたしには決めている部があるの。そして何より、 「あたしは女だっ!」  叫び、助走をつけて、天井から下がっている蛍光灯の支柱部分を掴み、勢いのままジャンプ。先輩たちを一気に飛び越えた。  唖然と見守る先輩たちをしり目に「失礼しますっ」振り向かずに、走り抜けた。
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