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「……という夢を見たわけよ」
「クラスメイトとして忠告します。病院に行くといいですよ?」
ゆっちの返事はそっけない。
でも、ポッキーをくわえて、上下にぴこぴこ動かしているしぐさは、とてもかわいかった。
「ノンノン! あたしがほしいのは、クラスメイトの意見ではなく、ずっ友としての助言なのだよっ!」
「ずっ友とか叫ばれるのは恥ずかしいです。いっそ出会う前に戻ってもいいですか?」
「そんなのだめっ! あたしゆっちがいないと生きていけない。毎日三食『ゆうげ』でもいいけど、ゆっちがいなくなったらあたしっ」
「なったら?」
「……えーっと……生きていけないのっ!」
「一瞬考えたのは気になりますけど、いいでしょう。オッケーです」
「ゆーっち!」
全力のハグ。
おお!? なにこれ? ゆっちめっちゃいい匂い。ああ、この匂いだけで生きていけそう。
「あの、小鞠(こまり)さん?」
ゆっちが、もじもじしながら、そっとあたしを押しのけた。
頬が赤らんでいる。
やばっ、やばいよその顔。押し倒したい! ハァハァ。
「小鞠さん、ねえ、周りをよく見てごらんなさい?」
耳元で囁かれ、押し倒したい衝動の横腹に蹴りを入れて、ふと我に返る。
クラスメイトの視線が痛い。そう、ここは教室だった。
んんっ。と咳ばらいを一つ。
「という夢を見たのさっ!」
あたしが叫ぶと、クラスメイトは何事もなかったように、読書、昼寝、早弁、おしゃべりの日常に戻っていった。
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