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「こんにちわ」
学園で『変わり者』のレッテルを貼られていたあたしに、わざわざ屋上まで来て、声をかけてくる人は始めてだった。
後で名前を知ったけど、同じクラスの、角川祐智(かどかわゆうち)さんだった。
あたしは、お昼でぼっち飯。
転落防止のフェンス越しに、ビル群と広告看板、新装開店のカラフルな客寄せ用バルーンが見えていた。
その光景が、ちょうど訪れた初夏の風と、なんとなくマッチして、いい感じだったのに。
とっておきの隠れ家に、土足で踏み込まれたような気分だった。
「……」
返事をしないで、口の中でかみ砕いたサンドイッチを、コーヒーで流し込んだ。
「何が見えますか?」
隣に来た。
放っておいてほしいんだけど。
「空」
適当な返事をしてみた。あっそ。で終わると思ってた。
「空に何を想っていたのですか?」
食いついてきたよこの子。空に何を想うって……。
「翼があったら、飛べるかなって」
適当に、思いついたことを言ってみた。
祐智さんは、一瞬、驚きに目を開き、少しだけほほ笑んだ。
「そうですね。飛べるかもしれません。でも……」
彼女はそこで言葉を切って、空を見た。
反射的に、祐智さんのほうを見た。
彼女の横顔は、同性のあたしが見てもドキっとするくらいキレイだった。
多分この場所で、シチュエーションで、夕暮れの放課後だったら、付き合って下さいって告白してるよきっと。
彼女がこちらを見た。目が合った。なんとなく、気まずい。
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