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実は、さっきから教室にいて、何度か注意していたのだが、誰も気づいていなかった。
名前は影山。名の通り、影の薄い男だった。
「連絡は以上だ。あと、初日にも話したが、うちの学校は、部活動を義務づけているので、みな、来週までに、何らかの部活動に所属するように」
クラス内でざわめきと、ため息が漏れる。
とはいえ、影山の言う通り、クラス編成の初日にいわれたばかりで、ざわめきの大半は「そうだった」だとか「決まってない」だった。
とはいえ、いまどき部活の義務付けには反対意見も多かったそうで、入部は義務づけられているものの、活動の強制までは行われていないらしい。
幽霊部員が多い反面、熱心に打ち込む部員が多いのも事実。内申書に有利なんだとか。
ホームルーム終了。
今週いっぱいは、部活動の見学期間。今日は火曜日なので、まだ四日ある。
「小鞠さんは、部活動、決めました?」
「うん。まあね」
すでに気になる部活には目をつけてあった。
できれば、ゆっちも一緒にって思うけど、『あの部活』にはさすがに誘えない。
「ゆっち、本気であの部にするつもり?」
それは『帰宅部』。
部活をしません。ってことだけど「私には帰る家がございますので」と、天使の笑顔で言われたら、きっと皆が言うと思う。「そうですね」って。
「部員はまだ、私一人ですが、きっと、希望者が集まると思いますから」
中学の頃は、密かにファンクラブまであったゆっちだから、信者。もとい賛同者は絶対現れる。
「あたしも、協力してあげたいけど……」
2人、並んで歩いていると、数人の生徒に阻まれた。
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