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「もういい! 遅刻するぞ走れ!」
元の道まで引き戻すと、
やつの背中をバシバシ叩いて走らせる。
太陽は憎たらしいほど照りつけて、
アスファルトが早くも熱を放っていた。
本当なら歩いていけるはずだったんだ、
少なからず恨むぞ武智。
「せっかちなやつだな神原君。
もう少しあの場に留まろうと、
学舎の掟に背くこともあるまいに」
「校則って言えまどろっこしい!
大体おまえ、いつ盆栽なんて覚えたよ?
校庭の花壇にも興味持ったことないくせによ!」
「盆栽? そんなものに興味はないが」
まーた妙なこと言い出したよ。
今度は一体どういうことだ。
「じゃあなんでこんなに時間掛けた!」
「あれが素晴らしかったからに決まっている!
ああ、通学の途上でよかった、そうだろう?
また見る機会があるというものだ!」
嬉々として顔を輝かせながら、
一度走ると決めた武智の足はこれでもかとよく回る。
やおら手足の長い人間よりよほど目を引く俊足が、だんだんと俺を引き離していった。
くそう、なぜこうなる。
「おい……ちょっ……待て置いてくな!」
ずり落ちた鞄を肩に戻し、
俺はなんとか足の回転を早めた。
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