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向こう三十年の未来性を感じない町。
それがここに住む若者としての正直な意見だ。
活気があるのは学校の集まる中心部と、
それを取り巻く商店街のみ。
シャッター通りなんて言葉があるくらいだから、
商店街に活気があるのは結構なことだろう。
が、その周辺が空き地空き家だらけときちゃ、
ありがたみも薄れるというものだ。
町の外側を見ると、
住むのは大概独居老人ばかりとなる。
学校は小中高と揃っているわりに、
そこで育った若者は卒業すれば大概町を出ていくのだ。
出ていきたくなるような町だと思われちゃ心外だが、
まあ、わざわざ留まろうと思える町でもない。
進学を考えるなら出ていくほかないし、
働き口もそこまでじゃないからな。
蝉がうるさく騒ぎ立てる七月下旬。
そうした町で、
俺と武智は高三の夏を迎えている。
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