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「ここだ神原君! この部分だけが、
輝きを放つがごとく素晴らしさを帯びているだろう!」
返事は即答と呼ぶべきもので、
短く太いやつの指がぴんっと張って一点を指す。
延長線上を眼で追うとすぐ、
乾ききった黄土色の土が視界を占めた。
何というか、もはやあわれを催す乾き方だね。
──いや。
こいつが指しているのはそこじゃない。
眉をしかめて更に注目する。
砂状になった土の表面から何かがわずかに覗いていた。
何か。これが植物の鉢だということを踏まえれば考えるまでもない。
「……根か? 盆栽の」
「ああそうだ!」
正解、と言わんばかりにやつの声が弾んだ。
「こんなにも形良く張られた根は、見たことがない! 太く、深く……何とも生命力にあふれているではないか!
ああ神原君、そのひとつだけを見てはいけない。
もっと全体を見るのだ、全体を!
この根の配置、形作られる造形、
そして見事な等間隔──」
待て待て待て。
俺にはまるでついていけんぞ。
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