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あれがたとえばインターホンであったなら、
あいつはかなりの確率でスピーカー越しの声に門前払いを食わされ、俺は不満げな武智を心おきなく引きずって登校を再開できたわけだが、
残念ながらそうはならなかった。
十秒ほど経った後、
昔ながらの硝子戸がガタピシと開く。
中から家人であろう老人の顔が覗いた。
見るからに、渋い。
この十年笑うことなど多くて年一だったんじゃないかというほどに、顔面のしわが微動だにしない。
ただ、両目が動いて訪問者を凝視したことは俺の位置からでもわかった。
どんな風に映ったんだろうな、あいつのこと。
平日の朝の学生とくれば、
ファッションは制服と決まっている。
が、それにしてもやつの制服姿というものは浮き世離れを否めない。
もはややつという人間が制服のために設えられたかというほどに、似合いすぎているのだ。
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