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10.広島市街~隠密作戦(スニーキングミッション)~
隆義たちが、轟震に戻って来たその時──
格納庫の片隅に、一機のジャグリオンが鎮座していた。
最初にそれに気付いたのは、自分の機体をハンガーに固定しに来た心……。
「……あれ? お爺ちゃん、お兄さん戻ってたの?」
[いや……あいつならまだ戻ってないぞ。遠隔操縦で機体だけ帰ってきやがった]
心は義辰と無線で話しながら、壁に設置されたフォークリフトのような器具に、機体を固定する。
作業員が手慣れた動きで固定具の装着にかかり、さらに隣には隆義のシ式改が続いた。
「おい、シ式の方──少しホバーで浮いてくれ」
「あ、あぁ……心、どうすりゃいい?」
[作業員さんが調整してくれるから、少しだけホバーのスロットルを開けて。半分の、さらに半分ぐらい]
「了解」
心のレクチャーを受け、隆義はホバーのスロットルを前に倒す。半分の、半分……頭の中で復唱しながら。
「よーし、ゆっくり押せ。そのまま……よし!」
[はい、戻しても大丈夫だよ~]
「よし……」
シ式改が壁のフォークの間に収まると、やはり隣のジャグリオンと同じく、機体の固定が始まった。
「心、聞こえてたんだけど……お兄さんって……」
[正確には、お爺ちゃんの息子さんだよ。ボクたちの仲間の間ではドリルサージェント……つまり、教官で通ってるけど]
「博士の息子さん……」
[ボクにとっては、血は繋がってないけど兄弟も同然だよー。だって、お爺ちゃんに育てられてるからねぇ]
「……」
通信が、ぷつりと切れる。
隆義もシ式のエンジンを切ると、そのまま機体の外へと這い出て行った。
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