1人が本棚に入れています
本棚に追加
[ドローンで偵察する限りは、彼らは豪攻車を含めて各種の車両を巡回に用いているようです。車両の音が聞こえたら注意してください]
「了解した」
[教官さん、頼みましたよ~]
あいちゃんは、にんまりと笑みを浮かべて念を押す。
それを聞いた "教官" は、苦笑いを浮かべながら──
「少し意地が悪いぞ。──まぁ、もしドジを踏んだ時は頼む」
あいちゃんに軽く応えると、茂みに沿って移動を開始した。
「ドリルサージェント、状況開始」
教官は静かに呟き、足音を立てぬまま進む。
その姿は現代の「忍者」そのもの、彼は丸く満ちた月下を駆け抜けていく──
時を同じくして、こちらも……。
「ジョニーマクレーンだ。"タック" はどうなった?」
この時間、普通なら会社など仕事帰りに人々でごった返しているはずの駅。
厳密には、広島電鉄西広島駅──その周辺の別名とも言える地名、己斐(こい)。
一機のジャグリオンが、人も車も姿を消した橋で待機している。
["ジャック" 、こちらは上手くいった]
無線から、教官──そして新たに、タック(TAC)という呼び名が明らかになったドリルサージェントの声が響く。
「そっちは敵地のド真ん中か──こちらは、医療部隊と一緒に住民を避難させるのに忙しかったぜ」
[こちら、ラウンド。本当にお手数をおかけしました]
「今度は相方の事で、もっと手のかかる事を頼む所だろう?」
ジョニーマクレーン、本名・ジャック=マードック。
今の所、彼はJCMDFに所属する者達の中で唯一のイギリス人だ。
彼は、アフガニスタンで負ったこめかみの古傷の上に伝った汗を、右手の親指で跳ね飛ばすと、今一度モニターを睨む。
目の前の多目的モニターには、ドローンからの映像と、暗視装置からの緑色に染まった映像が映し出されていた。
[ジョニーマクレーン、気を付けてください。先程、平和公園の北で、武装した兵士を乗せた市内電車がそちらに向かって行くのが確認されました]
「俺の背後にあるステーション(駅)が、市内エリアと郊外エリアの境になるんだったな?」
[イエス。──今は無駄な戦闘を避けてください。どこかに身を隠した方が良いでしょう]
「誰かさんがドジを踏んだ時の為か……」
場面は、その誰かさん本人に戻る。
「ひどい言い様だな……」
[そうなった時が俺の出番だからな!]
最初のコメントを投稿しよう!