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「船員にAK-47と……ボートにはZPU-2、連装対空機関銃を乗せているのか」
[やけに重武装じゃないか。RPGどころか携行SAM(地対空ミサイル)を積んでいても驚かないぜ……おっと、例の電車が来た。しばらく隠れる]
「そっちも気を付けろよ……」
ジャックとの短い会話を終えた教官は、繁華街へと続く元安橋を素早く駆け抜ける。
相生橋から、わざわざこちらへ回り道したのは、巡回・監視部隊の目を避ける為と、開けた場所に身を晒す時間を極力減らす為だ。
ここからは道なりに大手町、商店が並ぶエリアに入るが……。
ほとんどの場所が停電した街は信号機すら動いていない様子だ。
「ここは繁華街か、アーケードの下に入った。……店は開いたままの状態で無人になっている。路上に品物がばら撒かれて、ひどく荒らされている」
見通しの悪い暗闇の中、暗視装置を頼りに進んでいく。
[こちらジョニーマクレーン。電車は橋の上で兵員を下ろし、引き返していった。兵員は小型のトランシーバーを持っているようだ。見た所、軍用の本格的な機種ではなさそうだが……]
[現在の敵の動きはどうですか?]
[テントを広げているのが見える。橋の上に監視所か陣地を作るつもりらしい……トランシーバーでどこかと話している]
[トランシーバーで? おかしいですね……広島市からの妨害電波のせいで、こちらは通信障害を起こしているのに……?]
「解った、後で妨害電波の発生源も調べてみよう……」
話しながらアーケードの下を東へ真っ直ぐに抜け、目の前に江波行きの市電の線路が走る紙屋町の本通りが見えて来た。
横断歩道をさらに真っ直ぐ進めば、紙屋町から八丁堀を経て、流川(ながれかわ)へと至る大きなアーケード街に出る。
だが、最初の目的地は広島城だ。ここから北に進まねばならない。
そして、真っ直ぐに進む事は、恐らく敵が占拠しているであろうリーガロイヤルホテルの真下を通る事になるのだが……。
「……地下街への入り口がある」
[紙屋町シャレオですね……アストラムラインの駅もありますし、敵が潜んでいると思われますが]
「どのみち、ここから先は敵の目を掻い潜りながら進む事になるだろう。……そろそろ本腰を入れてかかる」
あいちゃんの説明に聞き耳を立てながら、教官は足音をたてないように注意を払い、地下街に続く階段を下りていく。
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