愛着

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ドキドキ煩かった心音はあっさりと大人しくなり、言葉通り触れ合っているだけという、中学生も驚きの健全な夜を過ごしてしまった。 お陰で目覚めはすっきり、体も軽いわけだけど。 「……黒瀬さんの、ばか」 ベッドの中で触れたいなんて、期待するに決まっているじゃないか。普段そんなことを口にしそうにない、想い人に言われたのだから、尚更。 思い出していじける雪の気持ちなど露知らず、幸はすやすや、穏やかに寝息を立てている。 そっと細い頬を指の背で撫でれば、物足りないと感じていたのと同じだけの充足感に満たされて、何でもいいような気がしてしまった。 あまりにあっさりと絆されてしまうのは、所謂、惚れた弱みというやつなんだろうか。なんだか悔しい。 雪は幸を起こさないように上体を起こし、暖かい布団からそっと抜け出た。 「……ゆき、……?」 衣擦れの音か、雪の動く気配か。 寝起きで舌ったらずな幸に呼ばれ、雪が肩越しに振り返る。眠そうな瞳が申し訳ない。
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