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序章(不思議な出逢い)
5月の半ば。
大粒の雨が大きめの傘を打つ。
“梅雨前線がなんちゃらかんちゃら……ああだこうだで今日は大雨です”
今朝のニュースでこんな予報を言っていたのを思い出した。
天気予報の降水確率は、たしか80パーセントだったと思う。さすがに残りの20パーセントに賭けて傘を持たないという愚行はしなかった。
しかしあれは滑稽だった。
もっとも自分自身のことではなく、友人の話だ。勇敢にも傘を置いてきた友人が滑稽だと思ったのだ。
まあ、些細なことではあるが。
彼は俺を見て拗ねるような顔をして俺の傘を羨み、少し入らせてくれと懇願した。
俺はこころよく了承し、分かれ道まで屋根を貸した。
その傘の下で話したことといえば、今日の授業のこと、部活動の今後など、およそつまらない高校生らしい会話だった。
そして今、俺はひとり商店街を歩いている。
雨のせいか人道りは少なく、雨音と、そして寂しい気配だけが存在している。
梅雨時期にたまにある土砂降りだった。
空の不機嫌さを表したようなたまたまの土砂降りが今、俺の傘をしたたかに濡らしている。
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