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コンクリートはさらに背をを冷やす。そして紫煙は相変わらず天に向かう。
「そういえば昨日、面白い体験をしましたよ」
「何かあったのか?」
「異世界に行ってきました」
俺がそう言った瞬間、明人は吹き出した。
タバコがむせたのか、「ゴホッ」と大きな咳をして。
「……めずらしいな。なんの冗談だ?」
「ギャグじゃあありませんよ。見たことも行ったこともない場所でした。そして、昨日通ったはずの入り口が今日はなかったんですよ。これを異世界といわずしてなんていうんですか」
「……お前は面白いな……本当に」
必死に笑いを抑えこむ明人。
俺はかまわず続ける。
「しかもそこで出会ったのは、巫女さんのカッコをした居候だったんです」
「お前はホント……ゴフッ……ガッ、オエッ」
「……大丈夫?」
「ん……大丈夫。……ゴホッ」
せき込む明人の背を叩く。白い息ととも煙が吐き出された。
その煙さえ天に登っていき、そしてタバコは地面に落ちる。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。……ガハッ……オエッ。まったく……せっかくのタバコが無駄になっちまったじゃないか」
「すいません。まさかそこまでおかしい話と思われるとは思わなくて」
「だっておかしいだろ!なにが悲しくってそんなホラ話をするんだ」
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