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俺は制服の袖を濡らす。
やがてたどり着いた森の先には、これまた大げさな階段が鎮座していた。
石造りの階段は苔蒸していて、手すりなどはあるはずもなかった。
そして階段の横……ごく小さい溝の排水口からは大量の雨水が吐き出されている。
その激しさは、もはや川のようだった。
俺の好奇心は強くなる。
階段はぬかるんでいたので慎重に登る。
一段一段……。確実に歩を進める。
果たして登りきった先には、またなにか鳥居のようなものが見えた。
俺は吸い寄せられるように鳥居へと近づく。
そこは大きな社だった。
そして、だれかが雨宿りをしているように静かに俺を見つめていた。
その人は、旧い時代の正装のような和の服装をした女の人だった。
目の焦点が合っていない。
こちらを向いているはずなのに、こっちを見ていないと感じた。
俺が焦点が合っていないその人に声をかけようとしたその時
「ねえ、神様っていると思う?」
なにか言われた。
「証明する条件が信仰だとしたら?そんなもので神様の存在が確立されるんだったら、結局神様は道化と同じものだと思わない?」
その声は、目の前の人物から出てきたものではない。
もっと近くから聞こえた。
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