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「手品師でも、魔法使いでもない神様に価値はあるのかしら?」
真横からだった。
ふと右に振り向くと、そこに立っていたのは巫女さんの格好をした女性。
このあたりは構えの大きな神社がないせいか、俺の目には馴染みのない恰好だ。
「ああ。気にしないでいいよ?ただの独り言……というか定例文のようなものね。いつもこんなことを聞くの。ここに来た人たちにね」
「……ここの巫女さん……ですか?」
「居候」
居候らしい。
見たこともないが芸者が使いそうな傘……。
派手ではないが、その雨傘も相まって、昭和を通り越し江戸時代……。
そんな古い雰囲気が漂う巫女さんである。
「居候と呼ぶには華やかな格好ですね」
「今でいうニートってやつかしら?」
「ニートっていうのは、なんかこう、もう少し小汚いイメージがあるのですが」
「小奇麗なニートがいて悪い?」
「いえ、こんな格好のニートは初めてなもんで」
「本当のニートを見たことがあるの?ニートは天然記念物で希少種で、その生態から見かけることはまずできないと聞いたけど?」
「誰に聞いたのか知りませんが、ずいぶん辛辣なんですね。自傷ですか?」
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